ちょっと大げさに表現すれば、ビジネスパーソンにとってスーツは戦闘服のようなもの。毎日の仕事と闘うための大切なアイテムです。常にベストな状態に保っておかなければならないものなのです。そこで、毎日のメンテナンスと定期的なクリーニングで、スーツとの愛情ある接し方をすれば、いつも快適な状態でお気に入りのスーツを着ることができます。
まずは、帰宅時のブラッシング。スーツ表面に付いたゴミやホコリを取り去るだけでなく、素材のウールの蘇生力もアップさせることができるのです。そのときに、ポケットの中の財布や携帯やハンカチなども取り出すのを忘れずに。あなたと同様にスーツも一日中着られていたことで疲れているのです。ぜひとも休ませてあげましょう。ジャケットハンガーに吊し、手先を生地の目に合わせ手首のスナップを利かせながら隠れたゴミを誘い出すようにするのがコツ。パンツは上から下にブラッシングするのが基本です。これも立派なクリーニングといえるでしょう。ゴミや汚れが取れるうえ、素材も生き返るわけです。一晩でスーツが生き生きと甦ることでしょう。高級スーツならなおさらメンテナンスに心がけましょう。
次に、汚れがかなり目立ったときや、シーズンオフになったときに必要な本格的なクリーニング。通常は、クリーニング屋さんに依頼し、ドライクリーニングで汚れを取るのが一般的になりますが、そのドライクリーニングとはいったいどんなものなのでしょうか? 普段あまり気にすることなく利用しているドライクリーニング。実は石油系の溶剤を使って洗浄しているのです。そのため食用油や機械油、ペンキ、口紅、ボールペン、マジックインキ、靴墨といった油脂系の汚れには効果的で、よく汚れが落ちるとされています。しかしビジネスパーソンにとって一連の油脂系の汚れは多いでしょうか? それよりもドライクリーニングで落ちにくい、水溶性の尿素、タンパク質、アンモニア、糖類、デンプン類、塩分、汗、清涼飲料水、アルコールなどが日常の生活で付着しやすいのです。
しかもコスト削減のために、その石油系溶剤を何度も使い回ししているクリーニング業者もあり、落として欲しい汚れが取れないばかりでなく、白いアイテムが薄汚れてしまうということもあるようです。さらにオートメーション化されたクリーニング工場では、プレス仕上げでの融通が利かないので、3つボタン上2つ掛けのジャケットが、下2つ掛けになって帰ってきたりと、デメリットも多いようです。大切なスーツだからこそ優しくクリーニングしたいものです。高級スーツなら一層の配慮が必要なのは、いうまでもありません。
そこでお勧めなのが、優しくクリーニングできるというウェットクリーニング。これは水洗いのことで、かつてドライクリーニングしかできなかったようなスーツなども水洗いしてしまうクリーニング方法です。ウェットクリーニングのメリットはスーツにとって大きく、ドライクリーニングで落ちない、日常的に付着しやすい前述の水溶性の汚れを落としてくれるだけでなく、仕上がりもドライ特有の薬品臭もなく、着たときのチクチクとした肌への刺激も少ないのでデリケートな肌の方にもお勧めなのです。
尚、ウェットクリーニングのお店についきましては、充分高級スーツの水洗い経験のある店舗を探してください。当店でもお客様が水洗いのクリーニング店にお出しになったのですが、スーツ全体が収縮してしまい、結局当店にお持ちになり、スーツを分解し、毛芯等付属品にまでプレスをかけ直して差し上げたケースがありました。高級スーツのウェットクリーニングを行っている店舗で本当に丁寧な仕事をする店舗ではまず、お客様から預かったスーツの採寸を行います。つまり、クリーニング後収縮していないかを確認し、収縮していたら直すためです。またクリーニング中、型崩れをしないようにスーツの各部位を仕付け糸で留める工程を持っているものです。さらに、最初にドライクリーニングでドライでしか落ちない汚れを落とした後に、ウェットクリーニングにはいるのです。このやり方がすべてではないと思いますが、前もって電話等で水洗いの工程について質問してみるというのも一案であると思います。
毎日のブラッシングと、正しいクリーニングで高級スーツに愛情を持って接すれば、いつも快適な状態で着ることができます。スーツが日常のビジネスシーンで、きっと味方になってくれるはずです。































