仁義なき?サマースーツの定義

例年にない節電が叫ばれている今年の夏は、サマースーツに高い注目が集まっています。やはり、暑い夏は、サマースーツで涼しく過ごしたいと誰もが思うところですが、この「夏服」とは、いったいどんな分類になっているのでしょうか?実は、これといった厳密な基準は存在しないのです。JIS規格にも日本メンズファッション協会でも特に定義は設けていないので、既製服の場合は、メーカー側や、売り場のスタッフの方が、勝手に「夏服」と呼んで売っているだけなのです。ですから、春秋に着る合服との境目も曖昧ですし、漠然とした分類なのだといえます。たとえさっきまで、春スーツとして売っていたものを“夏服”と宣言するだけでよいわけですから、定義なきならぬ、“仁義なき”夏服ともいえるかも知れません。前にも書きました、「クール」を謳った大手メーカーのスーツは、化繊が主体ですので、一見、涼しそうですが、カラダには悪そうです。

そこで、今回は、多くの夏スーツの特徴である裏地の「背抜き」や「半裏」について語ってみたいと思います。既製服の夏向けのスーツやジャケットなどで採用されている半裏や背抜きは、裏地の面積を少なくした分、軽くなった印象を与えます。印象とあえていったのは、裏地というのはスーツ生地の中で最も軽い素材ですので、多少減らしたとしても、総重量に大きな変化が出ないのです。着た感じもそれほど変化はないはずなのですが、人間の持つ“思い込み”によって軽くなった印象を受けるのかも知れません。

背中の部分の中心から下にかけて裏地を抜いたのが背抜きで、さらにその両サイドである脇の下から裾までの細腹(さいばら)部分の裏地までも排除したのが「半裏」となります。前身頃の見返し部分までも抜くと、いわゆるアンコンジャケットに近づいた構造になるのです。すなわち構築性が壊れてきますのデザイン性を維持するのが難しくなってきます。

オーダーメイドスーツの場合は、総裏が基本ですので、裏地が背中の裏にすべて施された状態です。国内外問わず、オーダーメイドスーツの老舗なら夏に着るスーツでも総裏をまずは、お勧めします。「背抜き」というのは、日本人が特別に好む裏地の構造のようです。海外で、背抜きや半裏のスーツをオーダーすると、“裏地を節約するようなケチな男”と思う人もいるそうです。暑さ対策のために裏地を減らしたという感覚は、海外の人には中々理解できないようです。ちなみに日本同様、高温多湿である香港にあるオーダーメイドのお店でも、背抜きや半裏でオーダーするのは、日本人だけだという話を聞いたことがあります。また、日本で売っている有名海外ブランドの背抜きのスーツも日本向けの特別仕様だったりもします。

背抜きや半裏のスーツの場合、シルエットが崩れるのはもちろんのこと、背中の下の部分、すなわちベント周りに横ジワが入ってしまうのが気になるところです。そういった一連のデメリットも理解しながら、オーダーするのなら構わないと思いますが、テーラーの方と、密に相談しながらスーツをつくるのがベストといえるでしょう。

裏地素材としては、今では、アルパカやシルク100%に替わりビスコースレーヨンやキュプラ(ベンベルグ)など、しなやかで、光沢があり、肌触りと着心地がよく、吸湿性も高い、天然繊維素材(再生繊維)が多くの高級スーツに採用されています。夏のスーツは、デザインやシルエット、シワなどへの対応性などトータルに考えながら選びたいものです。

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