急に涼しくなってきた今日この頃、秋冬への衣替えは、皆さんお済みでしょうか? もうすっかり秋物コーディネートで、身も心も秋気分店長の前田です。
クローゼットから秋物のスーツやセーターなどを取り出し、虫が食っていないかなどのチェックをした後に、一日陰干ししてショウノウ臭さを取り除いてから着ています。
最近では、無臭の虫除けショウノウもありますので、あまり臭いも気にならないのですが、陰干しして衣類に空気を取り込むことによって目覚めさせたくなるのです。「起きろ!」というわけではありませんが、「活躍の出番だぞ!」と、スーツなどに語りかけるのです。目覚めたスーツは、またカラダに馴染んで、毎日のビジネスの心強いパートナーになってくれるのです。
さて、そのスーツ。虫食いチェックとともにまじまじと見ていると、あらためて不思議なことに気がつきます。衿を立てて合わせると前がキレイに閉じるではありませんか!そうなのです。実は、スーツは、軍服の立衿が変化した歴史を持っているのです。ビクトリア王朝時代の英国で流行した狩猟用コートなるものは、軍服を元に考案され、第1ボタンを外して外側へ折り返し、ラペル(下衿)とし、衿の上部を開衿してカラー(上衿)として着ていたといいます。
そのデザインがモーニングコートに受け継がれ、その裾を切り落としたのがスーツになったというわけです。第1ボタンの名残が、皆さんが社員バッヂなどを刺す、フラワーホールとなのです。意外や意外です。そうです、スーツは、イギリス人によって発明されたといっても過言ではありませんね。
当初の1930年代ごろのスーツは3つボタンが主流でしたが、その後は、第1ボタンは留めずにラペルと一緒に開衿するスタイルがアメリカで流行し、次第に第1ボタンを留めないことを前提にしたデザインの“段返り”が定着。さらには1940年代後半からは、第1ボタンを省略した2つボタンスーツが登場するようになるのです。
ところが、1960年代初めより後半にかけは、世界的に3つボタンがリバイバル。日本でもアイビーブームとともに3つボタンが再流行し、1990年ごろにもまたまた流行。3つボタンは30年周期なのかも知れません。次に流行るのは2020年ごろかも知れませんね。
また、裾のベントですが、元々センターベントは、その昔、馬に乗りやすくするために切れ込みを入れたのが最初ということです。一方のサイドベンツは、馬に乗る必要がない水兵さんたちが剣を抜きやすくするためにサイドに切れ込みを入れたのが、そもそもの始まりというのが有力な定説のようです。フォーマルな席ではノーベントが現代でのマナーとなっています。
ところで、衿と同じように気になるのが、袖のボタン。イタリア人などは、オーダーメイドというのを見せびらかすように、ワザとスーツの袖の本切羽のボタンをいくつか閉めないで着こなしたりします(日本人でもたまに見かけます)が、そのボタンがなぜ付けられたかというと、その昔、英雄ナポレオン・ボナパルトが、軍を率いてロシアへ遠征した際に、兵隊たちは寒さのあまり、服の袖口で鼻水を拭いていた光景が、見苦しく汚いので、ナポレオンの命令で、金属のボタンを袖に付けることによって、鼻水を拭けないようにしたという説があります。真偽の程は、分かりませんが、スーツには、たくさんの歴史と、工夫が詰まっているというのは、いうまでもありません。
スーツを眺めながらたくさんの空想をしてしまう秋の楽しいひとときなのです。































