ゼニアの歴史(1)始まり

現在、エルメネジルド・ゼニア社の生地・スーツを取り扱う店舗は、世界で555店舗(直営店311店舗を含む。ゼニアの公式サイトより)。80以上の国と地域に拠点を持つゼニア社の歴史は、北イタリアの小さな街から始まりました。

エルメネジルド・ゼニア氏1910年、アルプスの麓の街トリヴェロに創設されたゼニア社の服地工場。当時、ゼニア社の工場にはわずか4台の織機があるだけでした。この工場を創設したエルメネジルド・ゼニア氏は、当時はまだ18歳。父親が行なっていた羊毛の製織業(原毛から生地を作ること)を引き継ぐ形で会社を立ち上げたエルメネジルド・ゼニア氏は、社名にその名が残る通り、現在のゼニア社の基礎を築いた人物として知られています。

「ゼニア社の工場で作る生地は、世界で最も美しいものでなければならない」——このエルメネジルド・ゼニア氏の考えを具現化するために、ゼニア社では、原毛の買い付けから自社で行うことにしました。服地メーカーの中には、原毛の買い付け、紡績、染色といった糸の加工に関する全工程を専門の別会社に委託し、出来上がった糸を買い取って自社で生地を製造するという企業も少なくありません。しかしゼニア社では、自分たちで高品質の原毛を選別・入手することが「世界で最も美しい生地」を作るために必須と考え、原産国から直接原毛を買い付ける手法を採りました。

このように、原毛の買い付けから紡績・染色といった糸の加工、生地に織り上げ製品を販売するところまで自社で管理するゼニア社のシステムは、すでに創業当時にその原型が作られていたのです。
参照ページ 「糸がゼニア生地に織られていくまで」

1910年にゼニア社の工場がトリヴェロに創設されてから18年後、ゼニア社の生地は国外でも販売されるようになります。1938年のアメリカでの販売を皮切りに、輸出される地域は年々拡大し、1945年にはゼニアの生地を販売する国は世界で40ヵ国を超えるまでになりました。高品質を追求するエルメネジルド・ゼニア氏の戦略が、多くの国々に受け入れられたと言えるでしょう。

エルメネジルド・ゼニア氏は、創業20余年にしてゼニア社を、誰もがその品質の高さを認める生地メーカーに成長させました。さらに彼は、生地作り以外の活動として「地域貢献」をスタートさせ、その基礎をも作ったのです。

ゼニア社が初めて工場を設立したのは、北イタリアのアルプスの麓に位置する街トリヴェロ。この街には、ゼニアの工場をはじめとする数多くの繊維工場が置かれています。その理由は、アルプス山脈を水源としてトリヴェロの街の中に豊かに湧き出している「水」にあります。繊維の加工には水が欠かせないため、多くの工場がこの街の豊富な水資源を求めて集まってくるのです。

原毛水の種類は大きく「硬水」と「軟水」の2つに分けられます。ミネラル成分が多いのが「硬水」、少ないのが「軟水」で、生地作りに使う水としては「軟水」、中でも天然の軟水が最適とされています。
参照ページ 「水の品質とエルメネジルド・ゼニア生地の品質のかかわりについて」

アルプス山脈の湧水は「超軟水」と呼ばれ、軟水の中でも特にミネラルの含有量が少ないものです。この超軟水を使って作られた生地は、原毛元来の柔らかさが生かされた豊かな風合いと、優れた耐久性とを持ち合わせたものになります。

ゼニア社が自ら買い付けを行う最高品質の原毛。その原毛の特長を生かしきるトリヴェロの水。この2つを合わせることで初めて、エルメネジルド・ゼニア氏の信念である「世界で最も美しい生地」の生産が実現されるのです。

エルメネジルド・ゼニア氏は、生地作りにおけるトリヴェロの水の重要性を十分に認識していました。トリヴェロの水を使って生地作りを続けるためには、周辺地域の豊かな自然を守っていくこと、さらにゼニア社の従業員だけでなくトリヴェロに住む人すべてに利益を還元すること。彼はそうした必要性をも感じ取っていたのです。

集会場、映画館・劇場、体育館、公営プール、図書館、医療センター、保育園など、トリヴェロの公的施設の多くがエルメネジルド・ゼニア氏によって創設されました。さらに地域環境・景観の保全事業の一環として、自社工場のあるトリヴェロと近隣にあるリゾート地ビエルモンテとを結ぶ14キロメートルの道路を整備。数千本に及ぶ植樹が施され、ゼニアにちなんで「パノラミカ・ゼニア」と名付けられたこの道路は、今もその美しい眺望で広く知られています。「トリヴェロの水を大切にすることは、トリヴェロの住民と自然を大切にすること」という彼の信念が、これらの社会事業の根幹となっているのです。

その類まれな才能で、生地作りの事業と地域貢献を成功に導いたエルメネジルド・ゼニア氏。彼の信念は、現在のゼニア社にも継承されています。原毛の仕入れから生産・加工・販売まで一貫して行うほか、原毛や製品の品質向上、生地加工の技術向上にも努めています。原毛の品質向上においては「トロフィー制度」を創設、高品質の原毛を扱う生産者を表彰しています。また、生地加工の技術面では、しわがつきにくい「トラベラー」や暑い時期にも涼しい着心地の「クールエフェクト」など、機能性を追求した生地の開発も進められています。

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