ゼニアの生地の耐久性について

Q:これまでスーツ量販店などでスーツを買っていましたが、今回、ゼニアのスーツを初めて購入しました。その際にお店の人から「ゼニアのスーツは毎日続けて着ないようにしてくださいね」と注意を受けました。毎日着てはいけない理由は何でしょうか。ゼニアの生地の耐久性に問題があるのでしょうか。

毎日続けて着るのは、どのスーツでもNG

スーツの1日のダメージまず、「ゼニアのスーツに限らず、どんなスーツでも毎日続けて着るのは避けたほうがよい」ということをご理解いただきたいと思います。
スーツの生地は、1日着るだけでもかなりのダメージを受けます。このダメージは主に「汗」と「ほこり」が原因。「汗」も「ほこり」も繊維の中にまで入り込んで、ほつれや変色のもとになるものです。

また、着用時に受ける圧力や摩擦などにより、生地の繊維自体もダメージを受けます。例えば、椅子に座った時には、おしりの部分の生地には体重がかかるために繊維が潰れ、膝を曲げることでその部分の生地が伸びます。

どんなスーツでも、これらのダメージを放置しておくと生地がどんどん劣化し、スーツの型崩れが起こります。これを防ぐためには、「着た後のケア」と「スーツを1日着た後は最低でも1日は休ませ、繊維を回復させる」ことが必要です。

1日スーツを着た後のケアとしては、ブラッシングを行います。帰宅して脱いだスーツを、次の順番でブラッシングしてください。

スーツのブラッシング・肩→胸→背中→両袖→裾の順に、ブラシを軽くかける。その時のコツは、手首のスナップを利かせて、生地の目に沿ってホコリをかき出すようにすること
・手首を回しながら、ラペルや襟の裏側を小刻みにブラッシング。ほこりをかき出すように、下から上へ何度も動かす
・ポケットの中身を出してから、中袋にブラシをかける
・前ボタンを外し、厚みのあるハンガーにかけ、ボタンホールを上にして風のよく通る場所に吊るす

このような毎日のケアとともに、2~3着以上のスーツを順に着回すようにすれば、生地の劣化を防ぐことができます。

ゼニアの生地の耐久性について

スーツの原毛さて、次にご説明するのは、ゼニアの生地の耐久性についてです。
ゼニアの生地には、とても細い糸が使われています。例えば、「トロフェオ」はゼニアが近年力を入れているレーベルですが、この生地には、繊維の平均直径が約16ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリメートル)という非常に細い原毛が使用されています。

こうした細い毛は独特の光沢感を持ち、手触りも柔らかいのですが、やはり耐久性は低下します。
そこで、細い原毛でも耐久性が損なわれないように、まず原毛から細い糸(「単糸」と呼ばれます)を作り、次はそれを2本撚り合わせ(「双糸」と呼ばれます)、その糸で生地を織ります。細い糸を2本撚り合わせると倍の太さの糸になり、耐久性が高くなります。その一方で、光沢感や柔らかさといった、細い原毛の持つ長所を生かすことができます。このように、ゼニアの生地には、耐久性と高い品質を同時に実現させる工夫が施されています。

また、ゼニアの生地に使われているウールには、弾力性や伸縮性、回復力が高いという特長があります。これは、「クリンプ」という縮れがウールの繊維の中にあるからです。

つまり、弾力性や伸縮性、回復力に富むウールの生地は、適度な休みを与えることで、着用時の摩擦や圧力によって受けたダメージから自然に回復できるのです。椅子に座った際におしりの部分の繊維が潰れても、膝の部分が伸びてしまっても、クリンプの形状が元に戻ることで、またふんわりと空気を含んだ元通りの生地になるのです。

それでは、ここまでの話のまとめをしてみましょう。

ゼニアに限らず、すべてのスーツにおいて、毎日続けて着ないようにすることはとても大切です。確かにゼニアの生地には非常に細い原毛が使われていますが、耐久性に関して他の生地より劣るわけではありません。むしろ、伸縮性や弾力性に富むウールの特長を活かした、ダメージからの回復力が高い生地であると言えるでしょう。

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