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ゼニア生地レーベル「トロピカル」とは

「トロピカル」は、ゼニアの夏の定番レーベルです。企画や柄も多く、誕生以来、目立ったリニューアルもほとんど行われていません。

ちょっと専門的な言い方をすると、ゼニアの「トロピカル」は、『オーストラリア産のスーパーファインウール』の『単糸』を横糸に、『双糸』を縦糸に使用し、『平織り』で織られている生地です。

『』でくくった用語について、それぞれ詳しく説明しましょう。

まず、『オーストラリア産のスーパーファインウール』についてです。
羊毛の産地といえば、オーストラリアやニュージーランドが有名ですが、中でもオーストラリア産のウールは、繊維が細くてしなやかなことが特徴。その中でも、スーパーファインウールと呼ばれているものは、特に繊維の直径が19.5ミクロン以下のものになります。手触りがやわらかく、光沢があるのが特徴です。

『単糸』とは、原毛から取り出した繊維を撚って作った糸。
『双糸』は、単糸を2本撚り合わせて作った糸のことです。双糸にすることで、糸の強度が増します。

原毛細い繊維に強い撚りをかけて作った糸には、軽く、吸湿性が高いという特徴があります。吸湿性が高いということは、つまり、汗を吸いやすいということでもあります。「トロピカル」のような、軽くて汗をよく吸う細い繊維は、夏用の生地にぴったりの素材なのです。

最後に、『平織り』という生地の織り方についてです。
平織りというのは、縦糸と横糸が交互に交差した織り方のことです。

平織り平織りは、もっとも基本的な織り方のひとつ。この織り方をすると、ハリがあって、丈夫で、縦・横方向の伸びに強い、つまり、非常に生地としての安定性が高く型崩れしにくい生地を作ることができます。

平織りイメージつまり、ここまでの話を総合すると、ゼニアの「トロピカル」は、「軽くて丈夫、吸湿性があり、型崩れしにくい生地である」ということが言えるわけです。
これが、「トロピカル」が夏の定番生地である理由。値段も比較的手頃なので、夏のビジネススーツを初めて作る方や、スーツを複数着作って毎日ローテーションで着たいという方などにはぴったりの生地だと言えるでしょう。

しかし、2010年以降、ゼニアの夏の定番生地にちょっとした変化が訪れています。

変化のきっかけは、2010年に、「トロピカル」から新レーベル「クールエフェクト」が派生したことです。

ゼニアの「クールエフェクト」は、太陽光を反射する特殊なトリートメントを生地にほどこすことで、生地表面温度を10度下げると言われています(詳細は「クールエフェクト」のページで説明しています)。誕生以来、夏でもスーツを涼しく着られる生地として、人気が出てきています。

「クールエフェクト」の誕生は、「トロピカル」の「柄」に大きな影響を与えました。

もともと、ゼニアの「トロピカル」には、大きく分けて、「定番柄」と流行を意識した「ファンシー柄(ストライプやチェックなど)」の2種類の柄が企画されていました。
しかし、2010年に「クールエフェクト」が誕生したことにより、ファンシー柄は「クールエフェクト」にシフト。

「クールエフェクト」の生地は主に「トロピカル」から派生したものですから、「トロピカル」にもファンシー柄があると、同じような生地から同じような柄が出ているということになってしまいます。おそらく、ゼニアはこのような事態を避けたかったのでしょう、「クールエフェクト」誕生以降は、「トロピカル」ではファンシー柄を作らなくなりました。

クールエフェクトゼニアの「トロピカル」から派生した「クールエフェクト」は、機能性にすぐれ、柄も流行のものが多い生地として、ながらく春夏の定番レーベルであった「トロピカル」の人気にせまるレーベルになりつつあります。
また、最近のゼニアの「クールエフェクト」への力の入れようから考えると、数年内にはひょっとしたら「トラベラーのクールエフェクト」という、シワになりにくくしかも涼しいという最強のゼニアの夏向きレーベルが誕生することも十分に考えられます。

しかし、使い勝手、つまり「比較的手頃な価格で、ベーシックな定番柄の夏のスーツを仕立てることができる」という点においては、ゼニアの「トロピカル」は非常に優れています。
クールビズが普及してきたとはいえ、ビジネスシーンにおいては、まだまだ夏でもスーツを着なければいけない場面は多くあります。そのような機会が多い人を中心に「トロピカル」は、その軽さ、丈夫さ、手頃さで、手堅い人気を維持し続けるのではないでしょうか。

「クールエフェクト」はじめ、魅力的な春夏ものの生地の登場が予想される中、ゼニアの「トロピカル」は今後も定番素材としてありつづけるのか、あるいは他のレーベルがその座を奪うのか。春夏ものの企画が発表される時期には、動向をチェックしておきたいレーベルです。


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