ゼニア・ダンヒルのスーツが85,000円でオーダーメイドで創れる。ゼニア・ダンヒルのオーダースーツ専門店銀座SAKAEYA

今やスーツは、ビジネスマンにとってなくてはならないアイテム。スーツはいつ頃から日本で着用されるようになったのでしょうか?そして、いつ頃からゼニアスーツが認知されるようになったのでしょうか?
諸説は様々ありますが、スーツが日本で着用されるようになったのは、幕末末期から明治時代にかけて、西洋文明を取り入れ始めた頃だろうという説が有力です。海外と交渉するには、西洋人と同じ服装をするべきだ、という風潮が生まれ、明治後半には、スーツの原型とされ、燕尾服を改良・簡素化したラウンジスーツがイギリスから日本にも「背広」として紹介されました。みなさんもたびたび見かけることがある文豪・夏目漱石の写真。彼が写真で着ているスーツが、ラウンジスーツ、つまり「背広」です。
この「背広」、日本人にとってのスーツは、大正時代になってから一般的に着用されるようになり、日本でスーツといえば、イギリスをモデルとしていました。しかし、当時は、すべてオーダーメイドで、仕立て上げるまで、2~3ヶ月の時間が必要でした。
高度経済成長期と呼ばれる、昭和30年から40年代(1955年~1974年)頃になると、機械のオートメーション化が進んだことにより、デパートなどで個人の体型に合わせて2~3週間で仕立て上げる「イージーオーダー」タイプのスーツと、手頃に購入でき、すでに完成している既製品のスーツの2タイプのものが登場するようになりました。また、この時期と重なるように、昭和40年代にさしかかる頃には、量販店も出現するようになり、さらに低価格でスーツが購入できるようになっていきました。
そのような時代を経てきた日本のスーツ界に、ゼニアが登場するのは昭和52年(1977年)。この年にゼニア・ジャパンが創立されたのです。当初ゼニア・ジャパンでは、まだ既製品は取り扱ってはいませんでしたが、服地の輸入卸、販売を手がけており、百貨店にもゼニア生地が並ぶようになっていました。しかし、この時期でもまだ、日本国内ではイギリスモデルのスーツが主流でした。
この約10年後、日本のスーツの歴史に新しいモデルが登場します。その代表的なブランドが、イタリアの有名ブランド、「アルマーニ」です。バブル期只中の昭和62年(1987年)に、既製品として日本に上陸したのです。このことによって「Made in ITALY」の言葉とともに、イタリアンスーツやイタリア製生地が、日本人に広く知られるようになりました。つまり、それまでイギリスモデルのみだった日本のスーツに、イタリアンモデルをもたらしたのが、アルマーニということになります。イタリアンモデルは、アルマーニの人気とともに日本で認知度を上げていくことになります。
一方、ゼニアは、平成8年(1996年)秋に、銀座に直営店のフラッグシップショップをオープンさせます。1970年代にイタリア本国で誕生していた、ローマライン、ミラノラインなどのゼニアオリジナルのスーツラインが、初めて日本に登場したのも、この年ということになります。しかし、サイズスペックはイタリア人の体型が元になっており日本人にとっては着用しにくく、「ゼニア」自体の知名度もアルマーニほど高くはありませんでした。しかも、アルマーニのように、その時代に流行っていたゆとりのあるスタイルのスーツではなく、スリムでウエストの絞られたようなデザインのゼニアスーツは、当時の日本ではほとんど受け入れられることはありませんでした。
しかし、ゼニアにも転機が訪れます。
それは、男性ファッション雑誌が、ゼニアスーツをメインに特集を組んだことに始まります。この特集が掲載されてから3~5年程年数をかけて、日本国内にゼニアスーツの存在が急速に浸透していきます。
徐々に認知度を上げてきたゼニアは、平成13年(2001年)、第二のフラッグシップショップを渋谷にオープンします。この後、本格的にゼニアスーツが注目を浴びるようになるのです。その背景には、90年代後半~00年代にかけて流行していた日本国内のファッション傾向の変化も影響しています。
それまでは、ビジネスシーンでのスタイル(シルエット)の中心は、アルマーニを代表とした、ゆったりしたソフトなスーツスタイルでした。当然、カジュアルシーンでも「ストリート系」「ヒップホップ系」などのアメリカンカジュアルのようなルーズスタイルが流行っていました。
男性も女性もルーズシルエットのファッションスタイルだったところに、変化が見え始めるのが、96年頃。まず、女性のファッションが、より女性らしく見えるスリム系のスタイルに変化し、ローライズジーンズ・スキニージーンズに代表されるような、コンパクトなシルエットが人気を博し始めます。当然、男性のスタイルも女性のスタイルからやや遅れてはいましたが、徐々にスリム系のファッションに流行が変わっていきました。
このシルエットの変化により、スーツの分野でも、ゼニアが提案し続けてきたタイトなスタイルが脚光を浴びるようになったのです。
その後、ゼニアスーツが幅広い世代の日本人に受け入れられていき、特にVIPと呼ばれる人たちが競うようにゼニアスーツを選ぶようになったのには、雑誌の特集、時代のトレンドなどの要因もありましたが、何よりも、ゼニア独自のファッション性の高さと、生地自体の品質の良さが、他のブランドを大きく凌いでいるからだということは、言うまでもありません。今では、日本においてゼニアスーツは、一時の流行などではなく、根強い人気のあるブランドスーツの一つになったと言えるでしょう。
ゼニアスーツのラインの歴史に触れるとすれば、1970年代、絞りすぎないウエストラインと構築的な肩のラインが特徴のローマラインが、続けて、柔らかな肩のラインとシャープなウエストラインが現代的なミラノラインが登場しました。さらに2011年には、肩幅とチェストを大きく見せることで男性らしさを引き立てながらも、英国的なシルエットが魅力的なトリノラインが登場し、ローマラインが入れ替わるように姿を消しました。この流れの中でも、ミラノラインは、ゼニアスーツを代表する存在であり続けています。今後、どのようなラインのゼニアスーツが生まれ、それが日本の中でどのように受け入れられていくか、楽しみです。
