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ゼニア・ダンヒルのスーツが85,000円でオーダーメイドで創れる。ゼニア・ダンヒルのオーダースーツ専門店銀座SAKAEYA
Ｑ：ゼニアには、「アニオナ社」の生地で作られたコートがある、と聞きました。「アニオナ社」とは、どのような会社でしょうか？ また、生地の特徴や品質についても教えてください。
1953年に創業したレディースアパレルブランドのアニオナ社は、ゼニアと同じように、生地に使う原毛の生産から品質管理までを一貫して自社で行なっています。アニオナの生地としては、アルパカやビキューナ、カシミアなどの獣毛を使った製品が特に高く評価されており、自社ブランドのほか、イブ・サンローランやクリスチャン・ディオールといった一流ブランドのプレタポルテ（既製服）にも採用されています。
その中でも、ビキューナの品質には定評があります。ビキューナは、ビクーニャという動物の毛を織って作られる生地です。（ビクーニャは南アメリカ原産のラクダの仲間。日本では動物を指す時には「ビクーニャ」というスペイン語で、その体毛を指す時は「ビキューナ」という英語で呼ぶことが多いようです。ここでも、そのように書き分けて分かりやすくしています）
主に南アメリカのアルゼンチン、チリ、ボリビア、ペルーの高山地帯の草原に生息するビクーニャ。高山地帯といっても約3,700〜5,000ｍの標高で富士山より高い地域なので、どれほど厳しい生育環境であるかがおおよそ想像できると思います。
ビクーニャは厳しい寒さの中で暮らしていることから、その体には非常に柔らかく細い、断熱性に富む毛が生えています。体毛の細さは約10ミクロン（100分の１ミリメートル）。一般の衣料品で用いられるウールは直径約20〜30ミクロン、既製服のスーツでは約20〜23ミクロン、ゼニアの「トロフェオ」でも約16ミクロンであることを考えると、ビクーニャの体毛の細さがよくわかります。
このように、「ビキューナ」は柔らかく繊細な原毛から作られており、古来、高品質な生地として知られていました。インカ帝国では、国王への貢物にされることもあったようです。
しかし、その後は乱獲のためにビクーニャの数が減少、一時期は約5000頭にまで落ち込みました。ペルー政府は、自然保護区を設立、原毛の販売を禁止するなどの措置を講じ、ビクーニャ絶滅の回避をはかりました。
また、国際コンソーシアム（共同事業体）を設立してビキューナの流通と販売を行ない、２つの生産工場を立ち上げました。現在では、この国際コンソーシアムだけがビキューナの流通・販売を行なっています。そのためビキューナの生地には、ペルー政府の認可を得ていることを示す証明書がつけられています。
この国際コンソーシアムに参加しているアニオナ社では、高品質のビキューナの原毛の仕入れから生地の加工、販売までを行なっています。
ペルー政府が講じた対策が奏功して、ビクーニャの数は現在40万頭以上にまで増えたといわれています。しかし、原毛の収穫量が大幅に増えているわけではありません。ビクーニャの原毛の刈り取りが許されているのは２年に１度のみ、しかもその１回の刈り取りで取れる１頭当たりの原毛はたった250〜350ｇ。そのわずかな原毛のほとんどをアニオナ社をはじめ欧米の企業が買い付けることから、日本には年間でコート数着分程度しか入ってこないのが実状です。
ここまでお話してきたように、アニオナ社では希少価値の高いビキューナを生産していますが、実はこのアニオナ社を1990年に買収したのがゼニアなのです。ゼニアではこの買収により、クオリティの高いビキューナをはじめ、アニオナ社が手がける獣毛を用いたさまざまな生地の生産が可能になりました。ゼニアのコートにアニオナ社製の生地が使われているのは、こうした事情によるものなのです。
