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ゼニアスーツの生地の選び方

Q:ゼニアスーツを仕立ててもらおうと思っているのですが、トラベラーにするかエレクタにするかで悩んでいます。どうせ仕立ててもらうなら良い生地で、と思っているのですが、どちらがより良い生地なのでしょうか。

A:「良い生地」とはどんな生地か

エレクタミルドまず、「良い生地」というのはどういうものなのか、について考えましょう。
生地の品質を決める要因は複数ありますが、中でもよく知られているものに「スーパー表示」があります。スーパー表示とは、ウールの繊維の平均直径を表したものです。ウール以外のたとえばカシミヤやアンゴラなどの獣毛や、シルクやコットンといった天然繊維、ポリエステルなどの化学繊維には使用されません。

ウールは、原毛の繊維が細いほど、文字通り「繊細」な、手触りのいい高品質の糸を作ることができます。繊細な高品質の糸で織り上げた生地も、当然高品質になります。このことから、一般的には、「スーパー表示の数字が大きくなれば大きいほど、高品質な生地である」とされています。

しかし、ゼニアの生地にはスーパー表示がありません。これはなぜかというと、ゼニアは生地の品質は繊維の細さだけでは決まらない、と考えているからです。つまり、生地の品質は、たとえば単位面積当たりに使っている糸の本数や、織り方、織った後の仕上げなどのすべての要素を総合的に考えた結果決まるものだ、としているわけです(詳しくはこちらで解説しています)。

生地選びのコツは、レーベルの特徴を知ること

生地の品質は、素材だけではなく、織り上がった生地を総合的に考えた結果決まる。
このゼニアの考えを踏まえた上で、「トラベラーとエレクタのどちらが良い生地か」というお話に戻りましょう。その前に、各生地のコンセプトや特徴をご説明します。

トラベラーは、「ハンガーに掛けておけば翌日にはシワが取れる」と言われるほど、シワになりにくく、できたシワが元に戻りやすい生地です。この特徴から、出張や長時間の移動が多いビジネスマンに特に支持されています。誕生以来、秋冬物のみの生地でしたが、2014年より、春夏物の生地も登場しました。(より詳しい説明はこちら

エレクタは、ゼニアのオーダーメイド専用の生地です。ゼニアのレーベルには、オーダー用と既製品用があります。つまり、トラベラーなら既製品用のトラベラーと、オーダー用のトラベラーがあるわけです。しかし、エレクタには既製品のものはありません。つまり既製品にはない、個性的な柄の生地がそろっているレーベルなのです。
また、エレクタには「混合織り」と呼ばれる織り方を採用している色柄の生地があります。「混合織り」とは、1つの生地で複数の織り方を使い、柄が浮き出るように織る方法のこと。一般的には、「混合織り」をした生地は、生地の安定性が失われるため、仕立てた服のシルエットに影響が出たり、型崩れを起こしやすくなったります。しかし、エレクタは比較的太めの糸を使ってしっかり織り上げているので、混合織りをしても服のラインにはほとんど影響がなく、型崩れもしにくいのです。(より詳しい説明はこちら

トラベラーとエレクタは、まったく違う特徴がある生地です。どちらも「こういう生地を作りたい」というコンセプトがあり、それを実現するために最適な素材や織り方で作られています。
もちろん、ゼニアのレーベルの中には、冒頭のスーパー表示でいえばSuper150’Sクラスの、繊細な原毛を使用しているものもあります。ゼニアの秋冬物を代表するレーベ ル「トロフェオ」です。
「トロフェオ」は、繊維の平均直径が16ミクロン以下の原毛を使って織り上げている生地です。このクラスの糸は非常に繊細なので、そのまま生地に使用していては耐久性に問題が生じます。そのため、しっかり撚って糸を作ったあと(これを「単糸」といいます)、さらにその糸を2本撚り合わせて作った糸(これを「双糸」といいます)を使って生地を織ります。単糸にはしなやかで柔らかく、双糸には丈夫で光沢があるという特徴があります。トロフェオは縦糸に双糸を、横糸に単糸を使っています。これにより、単糸と双糸の両方の特徴が活きた、柔らかく、丈夫で、光沢感のある生地に仕上がっています。(詳しい説明はこちら

このように、ゼニアの秋冬生地だけをみても、
・シワに強く、シワからの回復力が高い「トラベラー」
・オーダー用として個性的な柄がそろい、肉厚でしっかりした生地の「エレクタ」
・繊細な糸を使い、光沢感、高級感にすぐれた「トロフェオ」

と、個性や特徴の異なる、さまざまな種類の生地があります。

これらの特徴を考えると、基本的には、
・出張や会議などが多い方には「トラベラー」
・ハリと厚みのあるしっかりした冬物スーツを創りたい方には「エレクタ」
・おしゃれでラグジュアリーな雰囲気を楽しみたい方には、「トロフェオ」

がお勧めです。
しかし、そのスーツの着用シーンや季節、お客様にとっての着心地、似合う色柄、好みなどを総合的に考えて生地を選ぶのが「良い生地」、つまり「お客様にとって納得のいく生地選び」のコツです。

生地の特徴がよくわからない、どの生地を選べばいいか迷うという場合は、テーラーにご相談ください。優れたテーラーであれば、「そのときどきのお客様のTPOに応じた、最も良い生地」を勧めてくれるでしょう。
なお、今回はトラベラーとエレクタという秋冬物のレーベルのご質問だったのですが、同じことは、春夏物のレーベルでも言えます。春夏物の代表的なレーベルには「トロフェオ春夏物」「クールエフェクト」「SHANG」「トラベラー春夏物」などがありますが、「どのようなスーツを、どんなシーンで着たいか」をお考えになったうえで、それに最適な生地を選ぶのがベストです。

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