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ゼニア生地レーベル「ソルテックス」とは

現在、ゼニアの「ソルテックス」といえば、オールシーズン対応のフォーマル用の生地を指します。生地の色は黒、濃紺、一部オフホワイトがあるのみ。ブラックスーツ以外のフォーマルもしくはセレモニースーツの素材として使用されています。

平織り・タッサー織り図解しかし、元々、「ソルテックス」という名を持つゼニアのレーベルは2種類ありました。1つは、現在のフォーマル用レーベルの元になったタッサー織りの生地、そしてもう1つは、春夏用の一般的なスーツ用レーベルとして企画されていた平織りの生地です。

それぞれの生地の織り方について簡単に説明しておきましょう。タッサー織りも平織りも、縦糸と横糸を交互にくぐらせる折り方です。しかし、タッサー織りの場合、縦糸よりも太い横糸を使って織るのが特徴。この結果、横方向に畝(うね:盛り上がって見える筋のこと)ができます。

次に、糸についてです。「ソルテックス」は、春夏スーツ用もフォーマル用も、オーストラリア産とニュージーランド産のウールをブレンドし、細い繊維に強く撚りをかけて作った糸を使用しています。

なぜわざわざ産地が違うウールをブレンドしたものを「ソルテックス」に使っているのかというと、ひとくちに「ウール」といっても産地によってその特徴が違うからです。

捲縮図解簡単にいうと、オーストラリア産のウールは、繊維が白く細いという特徴があります。繊維1本1本は長くて丈夫。捲縮(けんしゅく)と呼ばれる細かな縮れがあるため、伸縮性や弾力性に富んでいるという特徴もあります。

捲縮について少し説明しましょう。丸くくるまった毛を持つ羊ですが、羊毛を1本1本よく見ると、細かく縮れ、ねじれているのがわかります。この縮れ、ねじれを捲縮と呼ぶのです。

捲縮は、羊の種類や産地によって違いがあります。ゼニアの生地に主に使われているオーストラリア産ウールの場合は、前述の通り、比較的捲縮が多い、つまり繊維の縮れやねじれが多いことが特徴です。

「ソルテックス」に混紡されているニュージーランド産のウールは、捲縮そのものは他の国のウールに比べると多くありません。しかし、1つ1つの縮れのわん曲は大きいため、ねじれに対する耐性は高くなります。その結果、ストレッチ性が高くシワになりにくい、ふんわりとした柔らかさがあるなどの特徴がうまれます。

また、ニュージーランド産のウールにはこの他にも、非常に白く、染めたときの発色が美しいという特徴があります。特にダークな色に染めると深みが出るので、黒や濃紺の「ソルテックス」をより上質感漂う生地にすることができるのです。

さらに、ニュージーランドの羊は、オーストラリアと比べると起伏にとんだ地形で飼育されているため、1年を通じて良質な草を求めてあちこちに移動し育ちます。栄養や健康状態もいいため、均質で、丈夫な原毛が取れます。均質で丈夫な原毛からは、毛羽立ちの少ない、なめらかで強く細い糸ができ、薄く、軽く、丈夫で、肌ざわりがいい生地を織ることができるようになります。

特徴が違う2種類のウールをブレンドすることで「ソルテックス」は丈夫かつツヤ感があり、柔らかで弾力がある素材となりました。そのため、フォーマル用「ソルテックス」はもちろん、ダーク系の色柄を中心に企画されていた春夏用の「ソルテックス」も改まった席にも対応できる、きちんとした印象を与えるスーツを作ることができたのです。

ところが、ゼニアは春夏用の生地「ソルテックス」の企画を2008年に休止します。その後は「ソルテックス」と言えば、オールシーズン対応のフォーマル生地となりました。

通常ゼニアは、用途や対応する季節が変われば、レーベル名を変更します。しかし、「ソルテックス」に関しては、以前から「ソルテックス」という同じ名前をフォーマル用と春夏用の2種類の生地に対して使用してきました。

用途や対応する季節は違っても、ゼニアの「ソルテッス」という名前の持つ高級感や「オーストラリア産ウールとニュージーランド産ウールをブレンドした糸で織る」という織り方は変わっていません。おそらく、ゼニアが用途や対応する季節が違う2つのレーベルに「ソルテックス」という名を使っていた理由はこれではないかと推測されます。

ラベルさて、ここで2つのラベルの写真をご覧ください。

上の赤いラベルと、下の黒いラベル。どちらもゼニアの「ソルテックス」のラベルです。
赤いラベルは、ゼニアのオーダー専用のレーベルであることを示すラベル(詳しくは「赤ラベル、青ラベル」のページで解説しています)。春夏レーベルとして企画されていた時期の「ソルテックス」についていたものです。

下の黒いラベルは、ゼニアのセレモニー専用レーベルにのみ付けられているラベルです。こちらにも、ラベルの一番下に赤字で「ソルテックス(Soltex)」という文字が書かれています。ちなみに、この黒いラベルに生地の名前が入るのは、「ソルテックス」と「トロフェオ」のみ。あとは生地の名前は入りません。また、赤ラベル、黒ラベルともに一番上に「CLOTH」と書かれていますが、これはオーダー用の生地であることを示しています。

同じ名前でありながら2008年を機にまったく違う用途の生地となったゼニアの「ソルテックス」。今後、フォーマル専用用途のみならず一般スーツ用途にも返り咲き進化をみせるのか、気になるところです。いずれにせよ、フォーマルとして使うのであれば、「トロフェオ」と並んでチェックしておきたい素材です。

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